バングラデシュ

「バングラデシュから こんにちは!」(2009年9月から3年間の予定でバングラデシュの大学に勤務になった渡邉・前事務局長のブログ。外部サイトです。)

バングラデシュプロジェクト


  NVCのバングラデシュにおける活動は、1998年にバングラデシュ全土を襲った大洪水に対する緊急支援から始まりました。2000年からは、チャンドプル県 サウスバリア村の貧困母子家庭への支援を開始しました。具体的には、母子家庭50世帯82名を対象に衣服、米を配布するとともに、その家族の8歳以下の子ども32名を対象に公立小学校の補習教室を実施しました。2001年からは、公立小学校の補習教室のみを実施し、2005年からは補習教室に加えて成人を対象とした識字教室を実施していました。
バングラデシュ事業は、2010年度限りで終了しました。


1.事業対象地域の状況

 バングラデシュ チャンドプル県 サウスバリア村は、首都ダッカから車で5時間南下した位置にあり、付近には大河であるメグナ川が流れ、洪水に見舞われる年もあります。
人口19,279人(男 8,282人、女10,997人)の内、18歳以上の人口は50%を占め、その多くが農業、漁業などの日雇い労働、リキシャ(自転車タクシー)運転手、行商人など低収入かつ不安定な仕事に就いています(2003年調べ)。
人口の90%はイスラム教徒、10%がヒンドゥー教徒、少数民族(ガロ族等)です。


▲雨期のメグナ川

2.私たちのカウンターパート

 バングラデシュにおけるNVCのカウンターパートは、NVC バングラデシュというバングラデシュ政府NGO局登録団体です。
 このNVC バングラデシュは、補習教室の児童たち、識字教室のお母さんたち、担当している教員、そして、私たちNVCとの間の連絡、調整を行うとともに、事業運営の管理を行っています。


▲NVC バングラデシュのメンバー、中央は代表のカベリ氏


3.公立小学校の補習教室

3-1.事業実施の背景

 バングラデシュの公立小学校(義務教育)の総就学率(※1)は97%ですが、純就学率(※2)は83%であり、入学すべき年齢になっても入学しないという状況が多く見られます。(2000年世界銀行調べ)

※1 公立小学校での教育を受けるべき年齢の総人口に対し、年齢にかかわらず、実際に教育を受けている人の割合。
※2 公立小学校での教育を受けるべき年齢の人口総数に対し、実際に教育を受けている当該年齢グループに属する人の割合。

 また、出席率も70%と低く、約40%の児童が最終学年である第5学年まで到達することなく退学しています。(2000年世界銀行調べ)
この退学の原因は、家庭の貧困、公立小学校の就学環境の悪さ、児童労働などです。

 このような状況は、サウスバリア村においても同様です。具体的には、次の2点の状況がみられます。

(1)入学すべき年齢と実際入学した年齢がずれている事例が多くある。
原因
・正確な年齢がわからず、結果として年齢がずれてしまう。
・保護者自身が、教育の重要性を認識しておらず、入学年齢に達したにもかかわらず入学させない。(周囲から促されてようやく入学させることが多い。)

(2)公立小学校の退学率が高い。
1年生で200人いた生徒が、最終学年(5年生)で50人になってしまったこともある。
原因
・家庭の貧困
家庭の手伝いをする為退学する者、教科書は無償で支給されるが、それ以外の文房具等の経費が負担できず退学する者は、高学年に進むにつれて多くなる。
・授業が理解できない
公立小学校の就学環境の悪さ(教師不足、教室不足等)が主たる原因。
バングラデシュの公立小学校において1人の教員が担当する児童数は、平均63名ですが(2000年、世界銀行調べ)、サウスバリア村の公立小学校においては、1人の教員が90人の児童を教えているクラスもあります。

 また、サウスバリア村における成人識字率の低さにも注目をする必要があります。
バングラデシュの成人識字率は、41.3%(2002年ユネスコ調べ)とされていますが、サウスバリア村における成人識字率は31%(男性35.6%、女性26.3%)であり、全国平均を下回っています。家庭において、保護者自身が自分の子どもの勉強内容を理解できず、また、子どもから質問を受けても答えることができない状況が多くみられます。


3-2.事業の目的

 この補習教室の目的は、公立小学校の退学を予防することを目的としています。公立小学校で退学した者は、その後復学し、中等教育へ進学する可能性は低い状況にあります。初等教育の初期の段階でつまづくことなく、学習をスタートさせることを目的としています。


3-3.補習教室の内容

補習教室の具体的な事業内容は以下のとおりです。

(1)補習教室への入学を希望する児童の中から、家計困窮者を優先的に受け入れます。
(2)公立小学校の放課後、15時より補習教室を実施しています。
使用する教科書は、公立小学校で使用している教科書が中心で、公立小学校での学習の不明点を解決することを第一目標としています。
また、必要に応じて補助教材を使用し、公立小学校の学習の理解を深めることも目標です。
あわせて、公立小学校では行わない公衆衛生(手洗い、歯磨き等)に関する教育も行い、この時期に身につけなくてはならない基本的な生活習慣の習得も目標としています。

(3)補習教室の児童には、文房具、雨傘、鞄、制服を支給しています。文房具は、公立小学校での学習においても必要なものです。また、雨傘、鞄は、雨期の通学における必需品です。
また、補習教室終了後、毎日、栄養補助食品(バナナ、ゆで卵、ビスケット等)を支給しています。公立小学校では、給食の支給が無い為、児童の中には、この栄養補助食を1食分にあてている児童もいます。

(4)補習教室担当教員は、必要に応じて家庭訪問を行い、保護者に対して補習教室の内容説明を行うとともに、家庭での学習状況の確認、児童の保護者からの要望の把握に努めています。


3-4.事業の成果

サウスバリア村で行っている公立小学校の補習教室によって、次のような成果が表れました。

(1)公立小学校の退学率が低下しました。
(2)初等教育の段階で、優秀な成績を修めることにより、児童たちの自信となり、勉学意欲の向上がみられました。
(3)この補習教室が核となり、児童の保護者、また地域全体の教育に対する関心が醸成されました。


▲元気な補習教室の児童たち

▲熱心に学ぶ補習教室の児童たち

▲将来の夢を語る補習教室の児童たち

▲補習教室で使用しているベンガル語の教材


4.補習教室児童の母親を対象とした識字教室 2005年度、2006年度 特定非営利活動法人ユニフェム(国連女性開発基金)日本国内委員会升本美苗基金助成事業

識字教室は、2005年度から補習教室と同じバングラデシュ サウスバリア村において開始した事業です。この識字教室は、識字教室は、現地では、「ミナエコリ」と呼ばれています。「ミナエ」は、升本美苗様のお名前、そして「コリ」はベンガル語で蕾(つぼみ)という意味です。
この名前には「勉強をして、蕾(つぼみ)から大きな花を咲かせたい!」という、お母さんたち、カウンターパート、そして我々の切なる願いが込められています。

4-1.事業実施の背景

(1)女性の成人識字率が低い

サウスバリア村 成人識字率 31.0%(男性35.6%、女性26.3%)(2003年調べ)。
※バングラデシュ全国平均 41.3%(男性52.3%、女性30.3%)(2002年ユネスコ調べ)

識字教室開始前の受講生たちの状況は、次のようなものでした。
・家庭において、母親自身が自分の子どもの勉強内容を理解できず、子どもから質問を受けても答えることができない。
・自分の住所、名前が書けない。
・手紙が書けない、読めない。
・計算ができない為に、家計の管理ができない。

(2)補習教室の実施

公立小学校の補習教室の実施が契機となり、母親たちが子どもの勉強内容に興味を持つようになり「自分たちも機会があれば学んでみたい」という希望を持つようになりました。

4-2.識字教室の概要

(1)受 講 生 公立小学校補習教室の児童の母親
(2)担当教員 ギタ・モジュンダール氏(サウスバリア村在住・女性)
(3)期  間 6ケ月コース (1月06月、7月012月)
(4)受講生数 15名
(5)時 間 帯 木曜日、金曜日を除く毎日、午前10時012時
→受講生の生活スタイルにあわせた時間帯設定。
(6)授業内容
6ケ月で、次の内容について徹底した反復学習を行っています。
・ベンガル語文字の読み方、書き方(母音→子音の順に学習)
・数字(ベンガル語表記)
・簡単な計算(ベンガル語で<ナムタ>と呼ばれる九九の計算)
・アルファベットの読み方、書き方

(7)使用教材

 小学校低学年用のテキストブック、識字教育用の壁掛け教材等を使用しています。
また、バングラデシュのNGO(例:BRAC)が作成した公衆衛生、ジェンダー等に関するテキストも使用しています。

(8)教授方法

教材を使用しながら、教員が随時板書を行い、それを受講生が各自の小型黒板に書き写し、音読を行っています。
→<目で読む><手で書く><口で話す>という方法を組み合わせ、反復学習を行うことにより、教育効果の向上を図っています。
 15人という少人数教育のメリットを最大限に活かし、理解度が低い受講生に対しては、教員が受講生の手を持ち、文字の書き方を繰り返し教えるというきめ細かな指導を行っています。


(9)出席状況

 受講生の出席は、教員が出席簿を以て管理をしており、毎回ほぼ全員が欠席なく受講しています。受講生の中には、授業時間外に教室で自学自習を行う方や、産前産後2週間休んだだけで、教室に通い続けた受講生もいます。

(10)理解度の確認方法

 カウンターパートが、中間試験(3ケ月経過時点)、最終試験(6ケ月終了時)を実施し、受講生の理解度を確認した。中間試験の結果は、その後の指導内容にフィードバックし、教育効果の向上を図っています。
 なお、中間試験では成績優秀者に、前期終了時には参加者全員にサリー(女性が着用する民族衣装)を与えました。


4-3.事業の成果

(1)受講生が非識字状態から脱却しました。

6ケ月のコースを終了することにより、ベンガル語の文字、数字、基本的な単語を習得することにより受講生は非識字状態から脱け出すことができました。
具体的な成果は、次のとおりです。
・家族全員の名前、住所を書けるようになった。
・簡単な手紙を書けるようになった。
・家計の管理ができる様になった。
・文字を読めるようになったので、村内のNGO事務所で郵便の仕分けの仕事に就いた受講生もいる。


▲クッキー・ベグンさん、産前産後2週間休んだだけで、識字教室に通い続けました

▲アリア・ベグンさん、2005年後期の成績最優秀候補者。
  午前に行われる授業で勉強が足りないと感じたら、夕方に教室に来て、自学自習していました。


(2)受講生にとって、教育の重要性について考える契機となりました。

 自ら学ぶことを通じて、勉学の楽しさに触れ、子どもが学んでいる内容についても興味を持ち始めました。受講生に対するインタビュー調査でも、「家庭において、勉強の話題がのぼる機会が増えた」との発言が多くみられました。
 もちろん、受講生自身が、文字、数字の読み書きを覚えたことにより、家庭で子ども(小学校1年03年)の勉強を見てあげることができるようになったそうです。

(3)継続的学習がもたらす効果

 ほぼ毎日、同じ時間帯で学習を続けることにより、学習行為が受講生の生活の一部として定着するとともに、〈非識字状態から抜け出す〉、〈新しいことを学ぶ〉という過程を通じて、生活に張り合いができた、と受講生たちは語っています。また、多くの受講生は、更なる勉学の機会を望んでいます。

(4)一緒に学ぶ仲間ができた

 毎日同じ時間に、同じ場所で、一緒に勉強をするうちに、今まで知らない者同士が、勉強という共通の目的を持つ仲間となりました。

▲受講生同士で勉強を教え合うこともあります

(5)担当教員への影響

 担当教員であるギタ・モジュンダール氏は、日々教育方法の改善に努めており、成人の非識字者への教育という彼女にとっても初めての事業に熱心に取り組んでいます。
1年間実施して、前述のような成果をあげたことは、担当教員にとっても大きな自信となっています。


▲受講生にベンガル語を教えるギタ先生

(6)受講生の周囲に与える影響

 村内の女性たちの中には、開講後1年を経過したこの識字教室に興味を持ち、受講の機会を待つ方も増えている。
また、受講生の家族も前述の成果に対して、好意的に受け止めている。